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アマゾンやグーグルのAIアシスタントは電話・テレビと融合へ

音声入力のAIアシスタントが日本以外の世界で大ヒット中だ。今後の機能追加で、固定電話やテレビとの融合まで見えてきた。 by Jamie Condliffe2017.02.17

世界中の人が、アマゾン・アレクサやグーグル・アシスタントといった、人工知能(AI)の家庭内アシスタントに夢中だ。では、次はどうなるだろうか?

アマゾン・エコーやグーグル・ホームのスマート・スピーカー(アレクサやアシスタントのソフトウェアが動作する物理的な入れ物)を使ったことがあれば、その体験に抗えない魅力があるとわかっているはずだ。夕食の間、特定の曲を流してと頼んだり、寝室に行くまでの間にスマート電灯を消したり、料理中にタイマーをセットしたりすると、生活が少し快適になる。モルガン・スタンレーが、アマゾンが1100万台ものアレクサ内蔵機器を販売したと試算したのも当然に思える。

しかし、AI音声アシスタントのある生活を何カ月か続けると、限界があることにも気付く。大手テック企業は機能追加により、AIアシスタントを便利にしようとしている。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事によれば、アマゾンとグーグルは、消滅の危機にある固定電話を、スマート・アシスタントで置き換えられると考えている。記事は、両社が音声通話発信機能を開発中と報じており、ユーザーのデジタル電話帳を使って、スカイプのような通話を、完全にハンズフリーで可能にするのが狙いだという。しかし現時点では、両社ともプライバシー関連の懸念(AIスピーカーは原理的に装置のマイクが常にオンの状態だ)や受話器を使わず、スピーカー・フォンで会話が周囲に聞こえてしまう電話の使い勝手をどうすれば快適にできるかに奮闘しているという。

サード・パーティー製アプリによる新機能も続々登場するだろう。アマゾンは開発者向けの開発キットをすでに公開しており、順調だ。アマゾンのスマート・スピーカー「エコー」で使える「スキル」(スマート・アシスタント・ソフト「アレクサ」上で動作するアプリの呼び方)の数は、昨年5月の950件から現時点で8000個以上へ、ここ6カ月で大幅に増加した。グーグルもアマゾンに追随し、12月に独自の開発キットを公開した

ただし、開発側にとっては初期段階にあり、今後数カ月以内に、食料品の注文から他のスマート・ホーム製品との統合まで、さらに便利なサービスが少しずつ登場するだろう。また、一家で複数のアシスタントを同時に使えるシステムを作ろうとするサード・パーティー企業もある。たとえば、無線オーディオシステムのメーカーであるソノスは、アマゾン、グーグルと密接に連携して、アレクサとアシスタントを自社製品に統合しようとしている。

ただし、AIアシスタントには長期的課題もある。特にアレクサでは、専用アプリが急増する一方で、ユーザーはあまりサード・パーティー製アプリを使っていないのだ。AIアシスタントがスピーカーの形状をしているため、ユーザーは追加ソフトをインストールしたことを忘れてしまうのだ。音声インターフェイスが特徴の装置が、アプリの存在に気付いて欲しくて音声でプッシュ通知されてもうっとうしいし、かといって何の通知もなければ「今したいことを助けてくれるアプリ」の存在は、すぐに忘れられてしまう。

そこで、アマゾンやグーグルは家庭内アシスタント次世代モデルに画面を追加することを真剣に検討している。バイドゥのアンドリュー・ング主任科学者もMIT Technology Reviewに同様のことを述べた。スタンフォード大学の研究者による2016年の研究とング主任科学者のチームの研究によれば、音声入力はモバイル機器でタイプ入力するより3倍速く入力できるが「機械がユーザーに情報を通知する最速の方法は、画面を使うこと」だとわかった。

「たとえば、ユーザーが出前を注文したいとしましょう。AIアシスタントが音声で、こんな風に読み上げると想像してみてください。『以下は、あなたのいる地域の上位20件のレストランです。第1位は……』なんてバカみたいに遅いでしょう!」とング主任科学者はいう。

実際、バイドゥは画面付きの独自のスマート・アシスタント装置「リトル・フィッシュ」を開発している。リトル・フィッシュに質問すると、答えを読み上げずに、結果をさっとユーザーに表示する。しかも内蔵カメラにより、画面がユーザーのいる方を向くように回るのだ。アマゾンが開発中のエコーの次世代機も画面付きだと噂されている。AIアシスタントによる革命はやがてテレビ化するかもしれない。

(関連記事:Wall Street Journal, Verge, “2016年、テック関連最大のヒット商品はAIアシスタントだ(ただし日本語では使えない),” “アマゾンとグーグルはなぜスピーカーで戦っているのか?,” “アマゾン、アレクサ搭載次世代機に大型画面を追加?”)

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ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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