KADOKAWA Technology Review
×
Lyft’s Driverless Pipe Dream

生き残るのは
ウーバーか、トヨタか

自動運転テクノロジーが未完であるうちは、自動運転の大規模展開は困難だ。 by Will Knight2016.09.20

リフトの共同創業者ジョン・ジマー社長は自律自動車に楽観的だ。Mediumに投稿した長い記事でジマー社長は、自動運転や車を所有する意味の変化が輸送や都市環境を転換させることについて、自分の考えの要点を説明した。

なにより、ジマー社長はリフト所有の車のほとんどが、わずか5年以内に自動化すると予想している。多くの自動車メーカーやテック企業、さらにリフトの最大のライバルであるウーバーも最近こぞって自動化の分野に参入した。ジマー社長の投稿を読むと、自動運転革命はすでに起きているような気持ちになる。

しかし、本当だろうか。最近ウーバーの自律運転自動車を利用したが、テクノロジーは確かに素晴らしい一方で、完璧からは程遠い。自律自動車は、現実には人間の監督をいまだに必要としており、人間は運転操作を即座に引き受ける準備をしていなくてはいけない。センサーとアルゴリズムが今後数年間で着実に向上しても、交通状況、道路状況、天候の種類をすべて車に学習させることは、不可能とはいわないが、完璧にするのは困難だろう。

自動運転テクノロジーによって、運転手に対する報酬支払いという会社の最も高額な支出を削減できるため、ウーバー同様、リフトも自動車の自動化に投資する動機がある。しかし同時に、自動化は、ウーバーやリフトのような企業が、ドライバーを雇わないことで安価な配車サービスを提供して築き上げた自社のビジネスを崩壊させる恐れもある。

グーグルは当然自社の自動運転車を所持しており、報道によるとサンフランシスコ周辺で乗車シェアリングサービスを試験中であり、ジマー社長などの同業他社には脅威になるとみて間違い無いだろう。

しかし、自動化に関しては、リフトとウーバーには非常に大きな先行者のメリットがある。両社には自動運転車をどこに配置すれば最も効率的なのかのデータがある。自動運転車を割り当てるルートを自動運転が得意なルートに限れば、少なくとも初めのうちは、自動運転車をどんな場所でも完璧に動かすテクノロジーは両社には必要ない。

とはいえ「誰でもタクシードライバーになれるアプリ」の提供から、「自動運転車を大量に製造し、所有する事業」への移行は高コストな事業転換だ。

たとえジマー社長が正しいとしても、自動運転革命は簡単にはいかないだろう。

(関連記事:Wall Street Journal“My Self-Driving Uber Needed Human Help,”“完全ガッカリな自動運転 実用化でも晴れの日専用?”)

人気の記事ランキング
  1. We finally have a definition for open-source AI 「オープンソースAI」問題ついに決着、OSIが定義を発表
  2. Here’s how people are actually using AI カネにならない生成AIブーム、LLMはどう使われているか?
  3. The US physics community is not done working on trust 物理学界で繰り返される研究不正、再発防止には何が必要か
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る