KADOKAWA Technology Review
×
12/16開催 「再考ゲーミフィケーション」イベント参加受付中!
開拓者
CATHRYN VIRGINIA
35歳未満のイノベーター35人 2020開拓者
生分解性プラスチックや涼しさをもたらす生地、「見る」ことのできる車を実現するイノベーション。

Gregory Ekchian グレゴリー・エクチャン (32)

所属: マサチューセッツ工科大学

がん放射線療法の安全性と効果を高める方法を発明。

腫瘍細胞の死滅に必要となる放射線量は、腫瘍細胞内の酸素レベルによって異なる。酸素レベルは腫瘍細胞ごとで大きく異なるが、がん専門医は現在、酸素レベルに合わせて放射線量を調整していない。ストラテーゲン・バイオ(Stratagen Bio)のグレゴリー・エクチャン共同創業者は、個別化されたがん治療のために、腫瘍細胞の酸素レベルを読み取るセンサーを開発した。

エクチャン共同創業者は、ボストンにあるブリガム・アンド・ウイメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)の臨床医と話し合った結果、新しいセンサー・ツールの必要性を痛感した。彼は「高線量率小線源療法(high-dose-rate brachytherapy)」というがん治療技術を使った試作装置を開発した。この療法は、医師は1本の中空カテーテルを腫瘍に穿刺し、放射線シード(放射線を出す小さなカプセル)を送り込む。そして必要な放射線量を照射した後に取り除く。

エクチャン共同創業者の試作装置は、最近発明された酸素感受性ポリマー(重合体)の小片を改良したカテーテルの先端に取りつける。カテーテルは通常、MRIで身体のなかを透かしながら入れていくが、同時にカテーテルの先端に取りつけた酸素感受性ポリマーの陽子が励起する。酸素感受性ポリマーの陽子は、酸素が低レベルの状態に比べて、高レベルの酸素に囲まれている場合、平衡に戻る速度がかなり速い。そのため、平衡に戻る速さを利用して、腫瘍のさまざまな部位での酸素レベルの違いをマッピングできる。がん専門医はそれに基づき、放射線を照射するべき場所を特定し、もっとも効果的な照射時間や強度を調整できる。

「正常な組織を心配する必要がなければ、単に放射線を腫瘍全体に広げて照射すればいいでしょう」とエクチャン共同創業者は言う。だが、過度の放射線照射は患者を傷つけることがある。つまり、「放射線を集中して照射する場所がどこかを見つけるのが、とても重要なのです」。

エクチャン共同創業者は、7人の子宮頸がん患者の臨床試験の結果を公表する準備をしている。これはヒトを対象とした最初の試験結果だ。最終的には、自身の酸素検知手法を医療現場のニーズに幅広く活用したいと考えている。

人気の記事ランキング
  1. Google’s antitrust gut punch and the Trump wild card グーグルに帝国解体の危機、米司法省がクローム売却も要求
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #31 MITTR主催「再考ゲーミフィケーション」開催のご案内
  3. Four ways to protect your art from AI  生成AI時代の自衛術、 あなたのアート作品を スクレイピングから守る方法
人気の記事ランキング
  1. Google’s antitrust gut punch and the Trump wild card グーグルに帝国解体の危機、米司法省がクローム売却も要求
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #31 MITTR主催「再考ゲーミフィケーション」開催のご案内
  3. Four ways to protect your art from AI  生成AI時代の自衛術、 あなたのアート作品を スクレイピングから守る方法
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る