KADOKAWA Technology Review
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35歳未満のイノベーター35人 2024医学/生物工学
私たちの身体や脳の働きについて、まだ多くのことが解明されていない。病気の本質を探求し、技術がどのように私たちの寿命を延ばし、より健康的な生活を実現できるかを模索しているイノベーターたちを紹介する。

Aditya Raguram アディティヤ・ラグラム (27)

所属: ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute)

新たなウイルス様粒子を設計し、遺伝子編集ツール「CRISPR」をより実用的なものにした。

ハーバード大学の博士課程在籍中、アディティヤ・ラグラム(27歳)は、CRISPR(クリスパー)を基盤とする2つの画期的な遺伝子工学ツールの開発に貢献した。いずれも、幅広い遺伝性疾患の治療に応用できる可能性を秘めているツールだ。しかし、大型のタンパク質で構成されるこれらのツールは、DNAの一部を削除し書き換えることができるが、体内の細胞に安全に送達するのは困難だ。ワクチンやその他の治療法で一般的に使われる送達メカニズムである改変ウイルスは、タンパク質を運搬するのに適していない。また、DNAやmRNAの形で細胞に送り込み、細胞内でタンパク質を合成させる方法もあるが、意図しない場所で遺伝子編集がなされるリスクがある。

この問題に対し、ラグラムは博士号取得を前に解決策を考案した。2022年に「35歳未満のイノベーター」に選ばれたサマギャ・バンスコタと協力し、新型のウイルス様粒子(VLP: virus-like particles)を開発した。この粒子は、大型のタンパク質を運搬できるだけでなく、標的細胞に接触した瞬間に内容物を放出することが可能という特徴を持つ。研究チームは、この技術を用いてマウスに遺伝子編集療法を施し、失明の原因となる遺伝子変異を修正する実験を実施した。その結果、一部の視力回復に成功した。

現在、CRISPRを用いた治療は実際に人間にも適用され始めているが、従来の方法では幹細胞を体外で編集し、それを移植する必要がある。ラグラムの技術は、この課題を克服し、一度の注射で遺伝子編集を直接体内で実施するという新たな可能性を切り開くものである。

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