
ミレイユ・カマリザ(34歳)は、結核菌を迅速かつ低コストで検出し、薬剤耐性の有無も確認できる新しい診断法を開発した。この手法は、現在広く使われている検査よりもはるかに高速で、診断結果が得られるまでの時間を大幅に短縮する。
結核は年間約130万人の命を奪う感染症であり、新型コロナウイルス(COVID-19)を除けば、最も致死率の高い感染症とされている。しかし、現在発展途上国で広く用いられている標準的な検査方法は、100年以上もほとんど変わっていない。これは、医師が喀痰(たん)のサンプルを顕微鏡で観察し、細菌の有無を確認するというものであり、結果が出るまで数週間かかるうえ、必ずしも正確とは限らない。
カマリザの検査法は、彼女が開発した特殊な色素を利用している。この色素は、生きた結核菌の細胞壁に取り込まれると蛍光を発する。さらに、彼女はこの色素を、結核菌がエネルギー源として利用するトレハロース(糖の一種)に結合させることで、生きた細菌だけを識別できる仕組みを考案した。つまり、染色したトレハロースを喀痰サンプルの結核菌に与えると、わずか数分で蛍光を発する。さらに、患者に抗生物質を投与し、数時間後に再び検査すれば、細菌がまだ生存しているかどうかをすぐに確認できる。
この画期的な手法は、数十年前から知られている基本的な化学・生物学の概念に基づいている。しかし、「この化学反応が診断技術に応用できると気づくのが難しかった」とカマリザは言う。「誰も真剣に考えたことがなかったと思います。実現は困難でした」。
カマリザは、この技術を研究室から実用化へと移行させるために、利益追求ではなく公共の利益を優先する企業を共同創業した。現在、臨床試験を進める一方で、彼女のチームはこの色素が血液サンプルにも適用可能であることを証明し、より安全で広く利用できる診断方法の実現を目指している。
「この色素は、異なる糖に結合させることで、さまざまな細菌、ウイルス、寄生虫、さらには宿主細胞自体を標的にできる可能性があります」とカマリザは語る。「将来的には、がん細胞を検出することもできるかもしれません」。
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