
現在、ほぼすべての電子機器や電気自動車(EV)はリチウムイオン電池で動いている。これらの電池は、金属製のカソード(正極)と通常はグラファイト(黒鉛)製のアノード(負極)の間で荷電粒子(イオン)を移動させることで機能する。
アノードを金属元素の中で最も軽いリチウムで作れば、同じサイズのバッテリーでもはるかに多くのエネルギーを蓄えられることは数十年前から研究者たちの間で知られていた。しかし、リチウムは非常に反応性が高く、通常の電解質(電池内のイオンを運ぶ液体)と相互作用すると、発火のリスクが高まる。こうした危険性を克服するため、研究者たちは液体電解質を固体電解質に置き換える試みを実施してきたが、固体電解質では電池の性能が低下するという問題があった。
チブエゼ・アマンチュク(31歳)は、新しいタイプの電解質を開発した。この電解質は、電池が動作しているときは液体の状態を保ちつつ、発火の原因となる溶媒を一切含まないという特徴を持つ。開発には数カ月にわたる塩の組み合わせの試験が必要だった。最終的に、アマンチュクのチームはリチウム、カリウム、セシウムを組み合わせた電解質を作り出した。この電解質は45°Cで溶けるため、電気自動車や電力網向けのバッテリーに適用可能だと考えられる。現在、彼らはこの融点を0°Cに近づけることを目標に研究を進めている。
アマンチュクによれば、この技術はまだ商業化には至っていない。しかし、彼はこれを「リチウム金属電池の実現という、長年の夢に向けた重要な一歩」と位置付けている。「私たちの研究は、高エネルギー密度で高性能なバッテリーを、安全性を犠牲にすることなく実現できることを示しています」とアマンチュクは話す。
- 人気の記事ランキング
-
- How a 1980s toy robot arm inspired modern robotics 世界の工学者を魅了し続ける 80年代の日本のおもちゃ
- Why Chinese manufacturers are going viral on TikTok 「ほぼエルメス」を工場直送 中国の下請け企業が ティックトックで反旗
- Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
- A US court just put ownership of CRISPR back in play CRISPR特許訴訟で新展開、米国で再審理へ