
DNAの二重らせん構造は、科学の象徴ともいえるほど広く知られている。しかし、この構造は巻き込まれたり、押しつぶされたり、折りたたまれたりして、さまざまな形を作り出すことができる。合成DNAを用いれば、科学者はDNAを折り紙のように自在に折り曲げることが可能になる。
レオポルド・グリーン(34歳)は、特にチューブ状のDNA構造の作成に関心を持っている。この形状は物質が内部を通過できるという利点を持ち、細胞内に導入すれば、タンパク質やその他の化学物質が細胞の内外を行き来できるようになり、細胞の働きを変える可能性がある。
パデュー大学の合成生物学者であるグリーンは、DNAナノチューブを作成する方法を開発した。彼の手法では、微小なDNAタイルを組み合わせることで、成長したり縮んだりするチューブ状の構造を作ることができる。「これは芸術と科学、工学が美しく調和したものです」とグリーンは語る。
グリーンは、このアプローチを慢性疾患の治療に応用したいと考えている。多くの慢性疾患は異常な免疫応答に関連しているが、もし体内に共生する「有益な」微生物を活用し、免疫応答を抑制することができればどうなるだろうか?
彼の研究室では、E. coli Nissle(エシェリヒア・コリ・ニッスレ)という善玉菌として知られる微生物(腸内細菌叢)を改変し、免疫細胞の働きに影響を与えるタンパク質を分泌できるようにした。さらに、このような微生物を、疾患のシグナルを感知し、応答する仕組みに発展させることで、ナノチューブを細胞膜に組み込んだ微生物が「免疫システムを正しい方向へ導く」手助けをする可能性があるという。
例えば、湿疹のような疾患に対しては、皮膚に生息する微生物に焦点を当てることができる。しかし、グリーンは、膣内に生息する微生物の研究も進めている。さらに、改変した微生物を脳を含むさまざまな体内の細胞に標的化することも可能だと考えている。
理論的には、患者の体から微生物を採取し、改変した後、プロバイオティクス療法のような治療法として再導入することができる。「それが私の長期的なビジョンです」とグリーンは話す。
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