キム・インホ(34歳)は、軽量で柔軟かつ高強度な人工筋繊維を開発した。彼は、この技術を脳性麻痺の人々を支援するウェアラブル・デバイスに活用することを構想している。だが、この新素材は人間の筋繊維の約6倍の出力を生み出し、自重の5000倍もの重量を持ち上げることができるため、兵士や建設作業員、高齢者の筋力を補助するスーツにも応用が可能だ。また、より自然な動きをするロボットの開発にも寄与する可能性がある。
現在、外骨格スーツ(パワードスーツ)はすでに存在するものの、そのほとんどは重くかさばり、価格も最大で20万ドルと非常に高価だ。一般の人々が利用するには現実的ではない。
キムのアプローチは、モーター駆動のアクチュエーターや剛性のあるフレームを、実際の筋肉に近い人工筋繊維に置き換えるというものだった。彼の繊維は柔軟な基材に、運動能力とパワーを強化する別の素材を組み合わせることで製造される。これまでにも同様の試みがあったが、従来の人工筋肉は速度、出力、重量、フィードバックセンシングの面で自然の筋肉に匹敵するものではなかった。
キムの開発した新素材「ヘラクレス・ファイバー(Hercules fibers)」は、低コストで量産が可能であり、その直径は平均200ミクロン程度と極めて細いが、束ねることで本物の筋肉繊維のように機能する。また、導電性を持つグラフェンを使用しているため、収縮時にリアルタイムでフィードバックを提供できる。
「私の目標は、信頼性の高い、商業化可能なウェアラブル・ロボットを作ることです」とキムは語る。理想は、歩行を練習している脳性麻痺の赤ちゃんに支援デバイスを届けることだ。
- 人気の記事ランキング
-
- The great AI hype correction of 2025 GPT-5ローンチ失敗、 企業95%が成果出せず … 転換期を迎えたAIブーム
- AI might not be coming for lawyers’ jobs anytime soon そして弁護士の仕事は残った 「44%自動化」の誇大宣伝 司法試験クリアも実務遠く
- 4 technologies that didn’t make our 2026 breakthroughs list 2026年版「世界を変える10大技術」から漏れた候補4つ
- Text-to-image AI models can be tricked into generating disturbing images AIモデル、「脱獄プロンプト」で不適切な画像生成の新手法