世界では毎年約1000万ヘクタールの森林が、自然災害や人間の活動によって失われている。遠隔地での森林再生を支援するために、飛行機やドローンから種を散布する「空中播種」が最も効率的な方法の1つとされている。しかし、動物、雨、風などの影響で、種子が確実に発芽するとは限らない。
ワシントン大学の材料科学者であり博士課程の研究者であるダンリ・ルオ(32歳)は、この問題を解決するため、自然界にヒントを求めた。彼女が着目したのは、「エロディウム(Erodium)」という花を咲かせる植物だった。この植物の種子はコイル状になっており、湿度の変化によって巻き上がったりほどけたりしながら、自ら土壌に潜り込む特性を持つ。
この仕組みを応用し、ルオは「E-seed」と呼ばれる小型の種子運搬システムを設計するチームを率いた。このE-seedには木材をベースにしたコイル状の尾が付いており、最大10ミリメートルの種子をさまざまな環境下で土壌に埋め込むことができる。さらに、この構造は肥料や発芽を助ける物質を運ぶ機能も備えている。
鍵となったのは、木材の「プログラム化」だった。ソフトウェア開発者がアプリケーションをプログラムするように、ルオは木材の構造を調整し、リグニンという成分を除去して柔軟性を向上させた。また、さまざまな形状のコイルが土壌でどのように動作するかをシミュレーションし、最終的に3本の湾曲した尾を持つ設計にたどりついた。これは、自然界のエロディウムの種子(1本の尾)よりも安定し、種がより確実に土壌に埋まる可能性を高める。
その結果、E-seedはシンプルで汎用性があり、天然由来の完全生分解性の解決策となった。すでにフォーチュン500企業によって技術ライセンスが取得されており、現在ルオは大量生産を可能にするメーカーや3Dプリントサービスの確保に取り組んでいる。
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