KADOKAWA Technology Review
×

Robot dexterity 器用に動くロボット

ニューラル・ネットワークの強化学習を用いて、複雑な現実世界への対処方法を自ら学べるロボットが登場した。やがては、工場や倉庫内の作業を学習したり、一般家庭での日常的な作業をこなしたりできるようなるかもしれない。

by MIT Technology Review Editors 2019.04.22
実現時期
3~5年

ニコラス・オルテガ

ロボットが、現実世界の扱い方について自ら学んでいる。

器用に動くロボット

・なぜ重要か
ロボットが乱雑な現実世界の対処法を学べれば、より多くのタスクを実行できる。
・キー・プレーヤー
オープンAI(OpenAI)、カーネギーメロン大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学バークレー校
・実現時期
3~5年

機械が人間の雇用を奪うなどと言われているが、産業用ロボットは依然として不器用で柔軟性がない。確かにロボットは、組立ラインの部品を、驚くべき精度で飽きもせず、何度も繰り返して拾い上げることができる。しかし、物体を1センチメートルほど移動させたり、少しだけ異なる他の何かと置き換えたりすると、ぎこちなく手探りをしたり、空(くう)を掴んだりする。

ロボットはまだ、人間のように、見ただけで物体をどう掴むかを判断するようにはプログラムされていない。しかし、バーチャルな試行錯誤を繰り返すことで、自分で物体の扱い方を学べるようになった。

こういったプロジェクトの1つに、手のひらの上で指を使っておもちゃのブロックを転がす学習をするロボットがある。サンフランシスコの非営利団体「オープンAI(OpenAI)」が開発した「ダクティル(Dactyl)」は、多くの照明とカメラに囲まれた市販のロボットハンドで構成されている。実際にロボットが試す前に、ニューラル・ネットワーク・ソフトウェアが、模擬環境下でブロックをつかんで向きを変える方法を強化学習の手法で学ぶ。ニューラル・ネットワークは、最初はランダムに試みるが、ネットワーク内の接続を徐々に強化して目標に近づいていく。

通常、こういった種類のバーチャル訓練の成果を現実世界に生かすのは不可能だ。摩擦や異なる物質のさまざまな特性は、シミュレーションが非常に困難であるからだ。オープンAIの研究チームは、ランダムな設定をバーチャル訓練に追加し、現実社会の乱雑さの代わりにすることでこの問題を回避している。

ロボットが実際の倉庫や工場で必要となる高度な技能を習得するには、さらなるブレークスルーが必要だ。だが、研究者がこの種の学習を確実なものにできれば、ロボットはやがて、ガジェットを組み立てたり、食器洗い機をセットしたり、おばあちゃんをベッドから起こしたりするようになるかもしれない。

(ウィル・ナイト)

フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る