KADOKAWA Technology Review
×
「新型コロナウイルス感染症」特集 公開中
Custom cancer vaccines

オーダーメイドのがんワクチン

患者のがん細胞の遺伝子配列を解析し、特定のがん細胞だけを破壊するように免疫細胞を活性化させる「個別化がんワクチン」の開発が進んでいる。従来の化学療法に比べて、健康な細胞へのダメージが少ないうえに、より効果的ながん治療が可能になるかもしれない。 実現時期: 現在治験を実施中 by MIT Technology Review Editors2019.04.22

PAPER BOAT CREATIVE | GETTY

この治療法は、身体が本来備えている防御機能を活用し、各腫瘍に固有の遺伝子突然変異を特定することで、がん細胞だけを破壊する。

オーダーメイドのがんワクチン

・なぜ重要か
従来の化学療法は多くの健康な細胞に損傷を与えるうえ、腫瘍に対して常に効果があるとは限らない。
・キー・プレーヤー
バイオンテック(BioNTech)、ジェネンテック(Genentech)
・実現時期
現在治験を実施中

科学者らは、最初の個別化がんワクチンの商品化を進めているところだ。ワクチンが期待通りに機能すれば、人間の免疫システムを活性化して、突然変異の独自性によって腫瘍を特定し、さまざまなタイプのがんを効果的に抑え込めるかもしれない。

このワクチンは、身体の自然の防御機能を用いて、がん細胞だけを選んで破壊する。そのため、従来の化学療法と異なり、健康な細胞へのダメージを限定できる。また、がん細胞を攻撃する免疫細胞は、がんの初期治療を終えた段階で、残っている細胞を見つけ出せるよう警戒することもできる。

こういったワクチンの可能性は、ヒトゲノム計画が完了した年の5年後、遺伝学者が最初のがん性腫瘍細胞の塩基配列を発表した2008年に具体化し始めた。

その後まもなく研究者たちは、がん細胞のDNAを、健常細胞のDNAや他の腫瘍細胞のDNAと比較し始めた。こういった研究により、すべてのがん細胞には数千まではいかなくても、数百という特定の突然変異があり、そのほとんどがそれぞれの腫瘍に特有のものであることがわかった。

数年後、ドイツのスタートアップ企業であるバイオンテック(BioNTech)が、こういった突然変異の複製が入ったワクチンが、体内の免疫システムを刺激し、同じ突然変異を持つすべてのがん細胞を探索・攻撃・破壊するT細胞を作り出せるという有力な証拠を提示した。

2017年12月、バイオンテックは、バイオテクノロジー大手のジェネンテック(Genentech)と共同で、がん患者を対象にワクチンの大規模な試験を開始した。現在進行中のこの治験は、少なくとも10の固形がんをターゲットとしており、世界中の施設から560人以上の患者を集めようとしている。

両社は、患者ごとにカスタマイズした数千単位のワクチンを、安価で迅速に生産するための新しい製造技術を開発している。しかし、容易ではないだろう。ワクチンを製造するには、患者の腫瘍の生検を実施して、DNA塩基配列を解析し、その情報を製造現場に迅速に送らなければならないからだ。さらに、 製造したワクチンは、すぐに病院に届けなければならない。遅れは致命的だ。

(アダム・ピオル)

人気の記事ランキング
  1. Warmer weather could slow the spread of the coronavirus 新型コロナ、「暖かくなったら終息」は本当か?
  2. The best, and the worst, of the coronavirus dashboards 新型コロナ、世界の最新データが見られるサイト10選
  3. The Covid-19 pandemic in two animated charts 国別グラフで見る、新型コロナのパンデミックはどう拡大したのか?
  4. The biggest questions our readers have about coronavirus Q&A:新型コロナウイルス感染症についていま知っておきたいこと
  5. Here’s how long the coronavirus can live in the air and on packages 新型コロナはダンボールに1日残存、吊革も感染ルートか
MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors]米国版 編集部
現在編集中です。
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る