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Q&A:新型コロナウイルス感染症についていま知っておきたいこと
Paige Vickers
The biggest questions our readers have about coronavirus

Q&A:新型コロナウイルス感染症についていま知っておきたいこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、分かっていないこともまだ多く、ウイルスとの闘いは長期戦になりそうだ。読者から寄せられた質問に答えよう。 by Neel V. Patel2020.03.24

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)は始まったばかりだ。誰もが自身や周囲のコミュニティを守るために知っておくべきことを理解し、今後に備えようとしている。MITテクノロジーレビューは、ソーシャルメディアなどのさまざまな手段を使って、今回のアウトブレイクに関して読者が抱く疑問を調べた。多く挙がった質問にここで答えていく。

Q:どのような結末になるのか?

誰にもわからない。インペリアル・カレッジ・ロンドンの疫学者によると、最悪のシナリオでは2億6400万人の米国人が感染し、220万人が死亡する可能性がある。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関しては、無症状の感染者数などの重要なデータもないため、対策を立てるのが難しくなっている。

12月下旬に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが報告されて以来、中国当局は感染の拡大を阻止するために、あらゆる移動と行動を厳しく制限してきた。この積極的な措置はうまくいっているようだ。中国は、3月15日の武漢での新規感染者がゼロだったことを報告した。厳しい制限措置は、韓国などの感染者の多い地域でも、新たな感染者の抑制に役立っていると言われている。

残念ながら、韓国またはシンガポールのようにある程度対応できている国がある一方で、危機的な状況に陥っているイタリアのような国もある。イタリアでは、アウトブレイク初期にうまく対応できなかった結果、感染者数が急増して医療システムに過剰な負荷がかかってしまった。

以上が結末がどうなるかかわからない理由の一部だ。世界のあらゆる場所で有効な新型コロナウイルスの封じ込め策はまだ存在しない。英国は以前、厳格な隔離措置や社会距離戦略の推進を見送り、代わりに国民の60%以上の感染を許容する、ゆっくりした集団免疫戦略を促進することを提案していた。この政策は方向転換されたが、手遅れかもしれない。

最終的に、ウイルスが世界のほぼ隅々まで広がり、それ以上広がる場所がなくなれば、パンデミックは自然に終息するかもしれない。しかし、それでは想像を絶する数の死者が出る。感染者をできるだけ早く治療するためにさまざまな抗ウイルス治療を組み合わた治療が急速に進み、感染拡大を遅らせて「(患者数が増加する)曲線を平坦化する」ための継続的な取り組みが実施される可能性がある。しかし、最も多くの命を救える解決策は、免疫を作り出すワクチンだ。ワクチンの開発にはおそらく18カ月かかり、開発されたワクチンがどれほど効果的かはまだわからない。

Q:隔離の目的は?

隔離によって、感染者または感染の疑いがある人は他者への感染を防ぎ、健康な人は健康を維持できる。新型コロナウイルスの感染から症状が出るまでの潜伏期間を超えて行動を制限した場合、その間に症状が出た人がいたら隔離することで、感染の拡大を抑え、症状が出た人の治療ができる。

隔離にはある程度の幅がある。外出を禁止する自宅待機や病院内での隔離は、非常に厳格なタイプだ。隔離は義務ではないこともある。感染したかもしれないと考える個人が、潜伏期間をすぎる(または病気から回復する)まで外出しないことが適切な行動だと考えて、自主的に自分自身を隔離することもある。

隔離は、社会距離戦略を促進し、「曲線を平坦化する」ために実行できる多数の措置の1つにすぎない。感染者数を常に制限することで、医療システムがピーク時の患者数に対応しやすくする。

Q:新型コロナウイルスの突然変異のスピードは?

突然変異は地球上のすべての遺伝子に自然発生する。ウイルスの遺伝子も例外ではない。実際、新型コロナウイルスのゲノムの突然変異を調べることで、国内の各アウトブレイクの関連性を確認できる。

これまでのところ、新型コロナウイルスの突然変異率は、1カ月に8〜10回の割合で突然変異を起こすインフルエンザウイルスの2分の1未満だ。 今後、新型コロナウイルスの研究が進むにつれて、より具体的な数字が出てくるだろう。

米国疾病予防管理センター(CDC)

数値よりもこの情報を具体的にどのように利用できるかを説明する方が難しい。ウイルスがより有毒あるいは脅威的なものに進化するには、複数回の遺伝子変異が必要となる。現在の研究では、新型コロナウイルスには人間に影響を及ぼす主な型は2つあり、その差異はわずか0.007%だ。一方の型のために開発されたワクチンが、他方の型にも有効である可能性は高い。

Q:新型コロナウイルス感染症は、治癒しても再感染する?

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、治癒してウイルスが検出されなくなった人に、検査で再び陽性反応が確認された事例がいくつか報告されている。ただし、これまでのところ、そのような症例は極めて珍しいようだ。中国のデータでは、感染者全体の0.2%未満に過ぎない動物が新型コロナウイルスに持続感染していることを確認したことを示す文献もある。

新型コロナウイルスについてまだよく分かっておらず、感染後にどのように免疫を獲得するのかについても十分には解明されていない。これまでのところ、再感染はまれなことで心配するほどのことではなさそうだ。多くの科学者は、回復した患者の一部で陽性反応が出る理由は何らかの検査ミスに関わる可能性が高いと考えているようだ。

Q:春が来たら一体どうなるのか? 暖かい季節の到来は新型コロナウイルスの阻止対策に都合がよいのか、あるいは不都合なのか?

新型コロナウイルスが、インフルエンザのように冬にピークに達して夏に収束するかどうかは、科学者が解明しようとしている大きな問題の1つだ。 新型コロナウイルスに季節性があるなら、秋の訪れとともに北半球の感染レベルが急上昇する前提で計画を立てる必要があることになる。

春が来たらどうなるのかはわからない。未査読の新たな研究では、これまでの世界の陽性症例の95%が-2〜10℃で発生していることが示されている。したがって、寒冷な気候の方が感染率が高い可能性がある。

AP Images

新型コロナウイルスに予想されるこの季節性は、すでにいくつかの国の対策に影響を与えている。厳しい批判にさらされた集団免疫を促進する英国の旧戦略では、冬季の感染者数のピーク時に医療システムの崩壊を回避するための計画を立てる必要があるという想定だった。

しかし、多種多様な要素が感染に影響を及ぼす可能性がある。新型コロナウイルスは発生してからまだ数カ月しか経っていない新しいウイルスなので、季節が変化するとどうなるかはまだ実際に観測されていない。新型コロナウイルスは夏にも変わりなく蔓延し続けるかもしれないし、冬に猛威を振るうのかもしれない。より確実な予測をするには、さらに多くのデータが必要だ。

Q:新型コロナウイルス感染者はどれくらいの期間、他者に感染させ得るのか?

研究によってさまざまな見解がある。ドイツの科学者の最近の研究によると、陽性反応が出た人は症状が現れる前、および症状が現れ始めた最初の週に他者へウイルスを感染させる可能性が最も高い。症状は感染後2〜14日の間に現れる。同研究では、症状発現から約8〜10日後に感染者は他者への感染力を失うことが示されている。したがって、新型コロナウイルス感染症は発症時に強い感染力があるが、通常6〜12日以内に抗体産生が始まるとすぐに体内からウイルスが除去されると考えられる。

しかし、別の研究では、新型コロナウイルスが感染後に体内から消えるまでの日数の中央値は20日で、感染者によっては37日間も体内に残存していたことが示されている。

これまでのところ、一般的な基本原則は、症状が発生した時点から14日間の継続的な隔離だ。

Q:米国の都市や町の数千人または数万人規模の感染者に対応するために必要な、保険医療の主なツール、テクノロジー、リソースは何か? まだ生産を拡大していないのはなぜか?

今後、医療システムが直面する最大の懸念に、入院患者に利用する多数の医療用人工呼吸器の確保がある。新型コロナウイルス感染症は呼吸器疾患であり、重症患者には酸素や呼吸を助ける機器を提供することが重要になる。現在、米国で利用できる人工呼吸器はわずか16万台で、新型コロナウイルスの感染者が激増した場合に必要となる台数をまったく賄いきれない。現在のビジネスモデルは、この規模の大量生産を奨励するようには設計されていないが、現在、それを変えようとする取り組みが進行中だ

人工呼吸器よりも、今すぐ必要とされているのは検査キットだ。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は3月16日の記者会見で、「必要なのは検査です。各国はとにかく検査を徹底してください」と求めた。残念ながら、まだ米国では十分な検査が実施されていないため、確認された感染者数よりもはるかに多くの感染者がいることはほぼ確実だ。民間および学術研究機関による新たな取り組みのおかげで、現在検査キットの生産が増加しているが、遅きに失したかもしれない。

また今後、抗ウイルス治療薬や実際に利用できるワクチンの生産規模を拡大する方法を考え出す必要もある。

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MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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