アマゾン家庭ロボ「アストロ」が進化、ドアの開けっぱなしも通知
アマゾンが招待制で販売している家庭用ロボット「アストロ(Astro)」の大規模アップデートを発表した。見守り機能の強化によって、これまでになく強力で家庭に入り込むロボットになるかもしれない。 by Tanya Basu2022.10.06
アマゾンは9月28日、家庭用ロボット「アストロ(Astro)」について、家庭と日常生活にさらに浸透させることを目的とした大規模アップデートを実施すると発表した。
今回の新機能は大まかに言えば、監視機能の強化だ。例えば、アストロがペットを観察して動き回っている動画をユーザーへ送信するといった、新機能のいくつかは標準で使える。それだけでなく、家の中を動き回り、部屋や侵入口を監視することもできる。「監視をドアや窓から始めることで、閉じているべき箇所が開いたままになっている場合、アストロはユーザーに警告できるようになります」とアマゾンのケン・ワシントン消費者向けロボット工学担当副社長は、アマゾンの新しいデバイスとサービスに関するプレゼンテーションで述べた。
アマゾンは同時に、防犯カメラ・システム「リング・カム(Ring cam)」との新しいコラボレーション「バーチャル・セキュリティ・ガード(Virtual Security Guard)」も発表した。両者が連携して敷地や住宅内への侵入を監視する。2018年にリング(Ring)を買収したアマゾンは、侵入の様子を録画して当局に通報することで、侵入被害から強固に守る方法として中小企業向けに同システムを売り込んでいる。
リングの監視方法には、常に論争があった。MITテクノロジーレビューのアイリーン・グオ記者による昨年の記事にあるように、リングは家庭内暴力の被害者を守るツールとして売り込んだが、同時に被害者の生活に割り込む手段ともなった。また、法執行機関による人種差別的捜査を助長し、プライバシーの侵害もしているとの批判も浴びた。これまでの個々の製品による監視をめぐる問題が、家の中を動き回るアストロの能力と、リングの確立された監視システムの組み合わせによって、従来以上に拡大するのではないかという懸念は当然だ。
アストロの警備員としての進化は特筆すべきものだ。アストロは1年ほど前に初めて発表されたが、まだ評価は限られている。購入にはアストロのテスト・プログラムに招待される必要があるからだ(アマゾンは初期の招待顧客には999ドルでアストロを提供したが、その後1450ドルに値上げした)。大きな目とR2D2のような外見を持つロボットのアストロは、間違いなくキュートだ。 しかし、限られたユーザーのレビューの中でも意見は割れている。多くの人は、アストロは部屋から部屋へ移動してちょっとした物を運ぶ以上のことはできないと感じている。また、屋内の間取り認識にも問題があり、ユーザーの中にはあまりにも熱心に人について回るので不気味だと感じる人もいた。
それでも、昨年の発表時の宣伝文句は、アストロは生活をより快適で楽しくする家庭のアシスタント、つまりキュートでドジな相棒というものだった。今年アマゾンは、アストロをはるかに重大な役割を担うデバイスに変え、人々の最も大切なペット、住宅、生活を見守る別の目を提供しようとしている。
生活に取り入れるあらゆる監視テクノロジーと同様に、アストロの利用にもある程度の信頼が必要だ。しかし、アストロを導入する場合、家の中を動き回ることができるロボットまでも信頼することになる。それは小さな一歩に見えるかもしれないが、人々の家庭用ロボットへの関わり方や見方だけでなく、私生活へのアマゾンの介入といった面では非常に大きな一歩になる。
ワシントン大学の人間中心ロボット工学研究所(Human-Centered Robotics Lab)の責任者であるマヤ・カクマク助教授は、アマゾンの家庭用監視エコシステムを構成する他の要素、つまりリングやアレクサ(Alexa)とアストロの連携が成功する可能性は十分あるという。「アストロは、家庭内監視サービスをシームレスに提供できます」(カクマク助教授)。
アマゾンは、人間の周囲の環境を知的にして人間をサポートさせる「環境知能」が詰まった住宅を目指すビジョンの一環として、人々の日常生活を可能な限りすべてを把握することが最終目標だと公言している。アマゾンのワシントン副社長はワイアード誌に対し、通常の防犯カメラは不快で脅威的だということをアマゾンは認識していると話している。そして、アストロはそうはならないだろうとワシントン副社長は話している。「動き回るロボットがあれば、アマゾンが描く未来のビジョンに上手く近づけられます」。もし順調に進めば、アマゾンのビジョンが人々と居住空間との関係性を変化させることは確実だ。アストロは、リングのすべてを把握する目と、アレクサのお茶目な手助けを調和させることで、これまでになく強力で侵略的な家庭用ロボットになるかもしれない。
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- 人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。