KADOKAWA Technology Review
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2017年版
ブレークスルー・テクノロジー10
麻痺の回復
10 Breakthrough Technologies 2017: Reversing Paralysis

麻痺の回復

脳インプラントの活用は目覚ましい進歩を遂げつつあり、無線で神経信号を送信し、失聴、失明を回復させたり、脊髄損傷で失われた体を自由に動かしたりできるようになる。 実現時期: 10~15年後 by Antonio Regalado2017.02.23

「よし、行け!」とスイス連邦工科大学ローザンヌ校のグレゴワール・クールティーヌ教授は心の中で叫んだ。

このフランス人神経科学者は、マカクサル(ニホンザルなどが属するオナガザル科の属)がランニングマシンの端で、背中を丸め走り出そうとしている様子を観察していた。クールティーヌ教授が率いる研究チームは、ナイフでマクザルの脊髄を途中まで切り裂き、右足を麻痺させた。次にクールティーヌはサルが再び歩けることを証明しようと思った。そこで研究チームは、サルの頭蓋骨の下、脳の運動皮質のある場所に記録装置を埋め込み、サルの脊髄のケガをさせた部分の周囲に柔らかい電極を材料にしたパッドを取り付けた。2つの電子装置は無線でつながっていた。

実験結果:システムがサルの動きたいという意志を読み取ると、即座に電気刺激の放出という形で脊髄までその意志を伝達した。間もなく、サルの右足は動き始めたのだ。伸びて縮む。伸びては縮む。右足は前方に向かって引きずったように動いた。「サルは足を動かしたいと思っていました。するとドッカーンです。サルは歩いていました」とクールティーヌ教授はとてもうれしそうに過去の出来事を振り返る。

近年、動物や人間で、脳の意志を読み取り、コンピューターのカーソルやロボットアームを動かす実験がある。機械と脳インプラントをケーブルでつないでいる段階だが、現在、研究者は次の重要な一歩として、麻痺の回復に取り掛かろうとしている。脳波読み取りテクノロジーを無線で直接体内の電気刺激装置と接続し、クールティーヌ教授が「神経のバイパス」と呼ぶ回路を作っているのだ。麻痺した人間の意志で、もう一度手足を動かせるようになるのだ。

クリーブランドにあるケース・ウェスタン・リザーブ大学では、頭と肩しか動かせない、中年の四肢麻痺障害を持つ男性が医者の要請に応じ、脳内に記録装置インプラントをふたつ埋め込んだ。クールティーヌ教授がサルに使ったのと同じタイプの装置だ。シリコン製で、切手より小型の装置には髪の毛ほどの細さの金属探針が100本つながっており、神経細胞が指令として発した信号を「聴き取 …

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