世界の温室効果ガス排出量の約30%は、私たちの日常生活に必要な製品を製造する工場の産業プロセスから生じている。この分野で消費されるエネルギーのほとんどは熱エネルギーであり、その熱はほぼすべて化石燃料を燃焼させることで供給されている。
風力発電や太陽光発電がこの問題を解決できる可能性はあるが、現在のところ24時間稼働する工場に安定して供給することが難しいため、現実的な解決策にはなっていない。アンドリュー・ポネック(31歳)は、この課題を解決することを目指している。
ポネックは、アントラ・エナジー(Antora Energy)の共同創設者兼最高経営責任者(CEO)として、余剰の低排出電力を熱として蓄え、必要に応じて放出できる熱電池を開発している。
アントラ・エナジーのテクノロジーでは、電気を炭素ブロックに流し、抵抗加熱によって2000℃(3632°F)以上に加熱する。この熱は、食品や紙の製造など、さまざまな産業プロセスで利用できる。さらに将来的には、熱を電力に変換する「熱光起電力セル」を活用し、蓄えたエネルギーを電気として供給することも計画している。
ポネックと共同創設者たちは、温室効果ガス排出を最大限削減することを目標に掲げ、脱炭素化が最も困難な重工業分野のクリーン化に焦点を当てた。当初、鉄道の電化、採掘テクノロジー、各種バッテリーの開発など、さまざまなテクノロジーを模索したが、最終的に熱エネルギー貯蔵が最も効果的と判断し、2018年にアントラ・エナジーを設立した。
現在、アントラ・エナジーはカリフォルニアの工場を拡張し、より多くの熱電池を生産できる体制を構築している。最近では投資家から1億5000万ドルの資金調達に成功し、さらに米国エネルギー省(DOE)の機関から1450万ドルの助成金を受けた。
ポネックは、輸送や農業の脱炭素化が注目されがちだが、重工業のクリーン化こそが気候変動対策の要となると強調する。「私たちには、大量の炭素排出を削減する大きなチャンスがあります」。
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