化学物質の製造は、しばしばエネルギー集約的なプロセスとなる。燃料や肥料といった有用な製品をつくる反応には、超高温や高圧が必要になることが多いからだ。そのような条件を満たすには化石燃料を燃やす必要があり、結果として気候変動の要因となる二酸化炭素が排出される。
32歳のイウネティム・アバテは、地球表面の深層部に目を向けることで、この状況を変えようと取り組んでいる。彼がMITで運営する研究室は、地下の熱と圧力を利用してアンモニア(一般的な化学物質)を製造する手法を開発している。また、この研究を商業化するためにアディス・エナジー(Addis Energy)という会社を共同創業した。
アンモニアは肥料の重要な成分であり、長距離海運などの分野では、水素と同様にグリーン燃料としての利用が検討されている。しかし現在のアンモニア製造は環境負荷の大きいプロセスであり、世界の二酸化炭素排出量の1〜2%を占めている。
地下で自然に発生する水素を探す研究者や企業が増えている。だがアバテはその探索には加わらず、地中の鉄分を多く含む岩石に水と触媒を加えて水素を生み出すという発想に至った。その後まもなく、彼は輸送が容易なアンモニアの製造へと方針を切り替えた。
アディス・エナジーは現在、このアンモニア生産プロセスを実証試験するための候補地を探している。一方で、アバテの研究室は反応の基礎となる化学の研究を続けている。
電気化学を専門とするアバテは、ナトリウムイオン電池の研究も主導している。その多くは、安定性を維持しつつ、電池セルにより多くのエネルギーを蓄えられる材料の開発に焦点を当てている。
アディス・エナジーとの研究は、採鉱の常識を覆す可能性があるとアバテは語る。地下から貴重な元素や重要鉱物を取り出すだけでなく、そこに存在する資源を利用して有用な化学物質を生み出すことにもつながるのだ。
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