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新型コロナはもう「終わった」のか? 現状を整理する
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Covid hasn't entirely gone away—here's where we stand

新型コロナはもう「終わった」のか? 現状を整理する

WHOが緊急事態の終了を宣言し、報告される感染者数が激減するなど、長く続いたパンデミックが収束化している。だが、ウイルスが消え去ったわけでもなく、多くの問題も残っている。現状を整理してみよう。 by Jessica Hamzelou2023.07.19

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

北半球は、いよいよ夏真っ盛り。2人の小さな子どもを持つ親にとっては、アイスクリーム、噴水、ピクニックの出番だ。そして避けられないのが、咳や風邪。今朝、長女は具合が悪いと言ってきたし、下の子はベッドに潜り込んできて私の顔に向かって咳をした。

もちろん咳をしたり風邪をひいたりするのは、子どもだけではない。同僚がちょうど新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した。症状は急速に現れ、彼女は「貨物列車にひかれたようなものだよ」と表現した。「懐かしいね」と別の同僚はコメントした。さらに別の同僚は次のように返した。「コロナってまだ存在してるの?」

保健医療を扱う記者として、新型コロナウイルス感染症をパンデミック初期から追ってきた私は、今でも定期的かつかなりの頻度でこの質問を受ける。そこで、新型コロナウイルスが今どのような状況に置かれているのか、確認してみよう。

新型コロナウイルス感染症については、いまだにいくつかの大きな、答えの出ていない問いが残っていることは指摘しておかなければならないだろう。まず第一に、このウイルスがどこからやって来たのか、まだ明らかになっていない。大部分の科学者は、中国・武漢の華南海鮮市場で、新型コロナウイルスが宿主である動物から人間に感染したと考えている。しかし一部の科学者は、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出したのではないか、との疑念を捨て去っていない。本誌のアントニオ・レガラード編集者は、5回構成の米国版ポッドキャスト番組「Curious Coincidence(奇妙な一致)」で、こうした疑問について検証している。

私たちが知っているのは、新型コロナウイルス感染症が2020年に世界中に広まったということだ。その年の1月9日、中国当局は肺炎に似た疾病の奇妙な集団感染が、新型のコロナウイルスによるものだと断定した。その数日後、初の死亡者が報告された。以来、700万人以上が新型コロナウイルス感染症で死亡したことが確認されている。実際の死者数は、それよりも大きいと考えられている。

都市をロックダウンすることや、マスクを着用することで、感染をを遅らせることはできたが、新型コロナウイルスを世界各国に広げまいとする「ゼロコロナ」政策はウイルスの拡散を止められなかった。現在までに確認されている世界の感染者数は、7億6700万人を超えている。

最終的にワクチンは、少なくともある程度は新型コロナウイルスの抑制に役立った。6月27日時点で、全世界で134億回以上のワクチンが接種された。現在では、感染の報告件数は大幅に減少した。7月3日のWHO(世界保健機関)の報告では、1週間の新型コロナウイルス感染症の感染者数は14万3898人だった。依然として感染は続いているが、昨年7月3日時点での1週間の感染者数である630万人に比べると、大幅な減少となっている。

数字が減った要因の一部には、検査を受ける頻度が変わったこと、世界中で無料検査が受けにくくなっていることも挙げられるかもしれない。ワクチンを接種した人でも感染することはあるが、仮に感染しても症状はより軽度で済むはずだ。ということは、無料検査の機会が減少すれば、病気にかかっても検査を受ける人が圧倒的に少なくなることを意味する。

家の掃除をしていた私は、新型コロナウイルス検査キットが入った箱を見つけた。大半は2年以上前から我が家にあったもので、今では古くなっている。半分は使用期限が切れており、もはや信頼性を失っている。だが、残りはどうすべきだろうか?

心強いことに、古くても使用期限が切れていない検査キットは、新型コロナウイルスの新たな変異株を検出できるようだ(とはいえ、今後変異株がどのように進化するのか私たちには分からないということは頭に入れておいた方がいい)。だが、検査キットはこれまで100%正確だったわけではなく、今もそれは変わっていない(本誌のアントニオ・レガラード編集者は2021年に複数の検査キットを評価しており、その結果はまちまちだった)。

つい先日公開された研究結果によれば、有症状者は48時間空けて検査を2回受けるべきだという。感染した可能性を自覚している無症状者の場合は、検査を3回受けるべきだとしている。

WHOは5月5日、新型コロナウイルス感染症はもはや国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態ではないと宣言した。良い話のように聞こえるが、新型コロナウイルス感染症は今や「定着した、現在進行中の健康問題」だからだという。そして、パンデミックはいまだに続いている。

昨年の冬のように、感染者数が急増する可能性はある。2022年12月19日、WHOの記録では感染者数が4400万人を超えた。ありがたいことに死者数は減っているが、それでもまだ死者は出続けている。最新のデータによると、7月3日までの1週間の新型コロナウイルス感染症による死者数は497人だったという。今年1月の死者数ははるかに多く、毎週2万から4万人が亡くなっていた。繰り返すが、これは新型コロナウイルス感染症による死者数のうち、記録されている分にすぎない。実際の死者数はおそらくもっと多いはずだ。

個人的には、パンデミックが始まった当初ほど新型コロナウイルス感染症に不安を感じていない。私は1回も欠かすことなくワクチン接種を受けており、少なくともすでに2度、新型コロナウイルスに感染しているからだ。そして幸運なことに、重大な疾病を呼び込みやすくする基礎疾患も抱えていない。

だが、後遺症(ロング・コビッド)については誰も話したがらない。論争のテーマにはなっている(子どもに残った新型コロナウイルス感染症の後遺症については、特に激しい論争が起こっている。詳しくはこちらの記事を参照)。長く続く痛みや苦しみなどの症状を抱える人の数は、把握されていないが相当な数に上る。科学者たちは、どんな形であれ新型コロナウイルスに感染すれば、その後に後遺症が残る可能性があると考えている。

だから私は念のため、期限の切れていない検査キットをひとまず手元に残しておくことにしよう。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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