KADOKAWA Technology Review
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人工知能(AI)
Vichhika Tep
35歳未満のイノベーター35人 2023人工知能(AI)
この1年間でAIは驚異的な進歩を遂げた。ここに紹介するイノベーターたちはAIを用いてあらゆる分野を再定義し、AIが安全に使用できることを保証しようと取り組んでいる。

Connor Coley コナー・コリー (29)

所属: マサチューセッツ工科大学(MIT)

化学者が新分子を発見したり、合成したりするのを支援するオープンソースのAIソフトウェアを開発。生成AIの手法を用いることで、化学者が実際に試すべき候補の数を大幅に絞り込める。

コナー・コリーは、化学者が新しい分子を発見したり合成したりするのを支援するオープンソースの人工知能(AI)ソフトウェアを開発した。「アスクコス(ASKCOS)」と呼ばれるこのツール群は、新薬や新素材を開発したり、工業プロセスの効率を高めたりするために、十数社の製薬会社と数万人の化学者が使用している。

長きにわたって、新分子の開発における最大のボトルネックの一つは、テストすべき興味深い候補をいかに特定するかだった。何十年もほとんど変わらずに実施されてきた新分子開発のプロセスでは、化学者が既知の分子をわずかに変更し、その生物学的、化学的、物理的な特性をテストしてきた。

コリーの手法は、生成AI(ジェネレーティブAI)の一形態を化学の分野に適用したものだ。化学者が関心のある特性を指定すると、AI駆動のアルゴリズムがその特性を持つ可能性が最も高い新分子をいくつか提案する。システムが既知の分子とその特性を分析し、わずかな構造変化が新しい挙動をもたらす可能性がどれくらいかを予想して候補を提示する仕組みだ。

これにより、絶対にうまくいかない候補のテストに化学者が費やす時間を減らせる。「私たちが取り組んでいる手法により、うまく機能する候補の発見というゴールに必要なシュート数を、おそらく2分の1、3分の1、ひょっとすると10分の1に減らせます」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)の化学工学とコンピューターサイエンスの助教授であるコリーは言う。

コリーのソフトウェアは、候補分子を特定すると、次にその製造に最適な方法を提案する。化学者が「分子を思い描き、考え出した」としても、何かを合成する方法を発見するのは簡単なことではないとコリーは言う。「私たちがそこまでやってのける必要があります」。

その目標に向けて、このシステムは最大の収率をもたらす可能性の高い手順の「レシピ」を化学者に提供する。コリーは今後、システムに実験用ロボットを追加する方法を見い出し、自動化を一層進めたシステムが、AIが提案したレシピに実際に従ってテストや改良を実施できるようにすることも考えている。

(ラス・ジャスカリアン)

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