KADOKAWA Technology Review
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エネルギー/持続可能性
Vichhika Tep
35歳未満のイノベーター35人 2023エネルギー/持続可能性
気候危機は多様な角度からの回答を求めている。イノベーターたちは、二酸化炭素回収、電池製造、送電網の管理といった問題を解決しようと取り組んでいる。

Young Suk Jo ヨン・ソクジョ (34)

所属: アモジー(Amogy)

トラックや船舶の動力源として、アンモニアを燃料として使用できるシステムを開発。運輸業における温暖化ガス排出量の削減に貢献する。

運輸業は、世界の温室効果ガス排出量の約15%を占め、世界で最も汚染を進めている産業の一つだ。電気自動車の普及により、今後数十年のうちに世界の温暖化ガス排出量は減らせるだろう。だがバッテリーは、長距離トラックや大洋航路船のような国際運輸で使われる乗り物を動かすのに十分なエネルギーを保持できない。

ヨン・ソクジョは、アンモニアという意外な化学物質を使用する解決策を思いついた。2020年にジョが共同創業したスタートアップ、アモジー(Amogy)は、一般的には肥料の成分として使われるアンモニアを燃料として使用できるシステムを、トラックや船舶の動力源として開発している。

アンモニアの最も魅力的な特性の一つは、エネルギー密度だ。つまり、比較的小さな容積に大量のエネルギーを詰め込むことができる。液体アンモニアは、現在のクリーン燃料の代表格である圧縮水素の約3倍のエネルギーを運べる。

アモジーにとって、運輸業でアンモニアを利用する上で鍵となるのは、アンモニアの分離である。同社のアンモニア発電システムのコアテクノロジーの一つは、クラッカーと呼ばれる化学反応器だ。この反応器はアンモニアを、水素と大気中に安全に放出できる窒素に分解し、発生した水素を燃料電池での発電に使用する。

アンモニア分解は新しいプロセスではないが、ジョとその共同発明者らのチームは、より低温での反応を助ける化学触媒を開発し、このプロセスを乗り物上で実行できるようにした。同チームはまた、現在の標準よりも効率的に稼働できる反応器も開発した。この反応器は、アンモニアに含まれるエネルギーの約40%を電気に変換できる。

(ケイシー・クラウンハート)

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