KADOKAWA Technology Review
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伸縮性のある電子回路から抗がん剤の新しい治験方法まで、未来のテクノロジーを築いている。

Will McLean ウィル・マクリーン (31)

フリークエンシー・セラピューティクス

人間の難聴はこれまでずっと不可逆的なものだった。マクリーンのイノベーションがその状況に変化をもたらすかもしれない。

ウィル・マクリーンは、多くの人が決して解決できないと考えていた「人間の難聴」という、医学の難問の解決法を見つけたと信じている。

マクリーンの研究は、内耳にあるらせん形の空洞であり、聴覚をつかさどる「蝸牛(かぎゅう)」に焦点を当てている。出生時、平均的な人間の蝸牛には、音波を感知して脳に送る有毛細胞が1万5000個含まれる。時間とともに、これらの有毛細胞の多くは、大きな音量の騒音や医薬品の副作用によって破壊される。鳥類、爬虫類、両生類の有毛細胞とは異なり、哺乳類の有毛細胞は自然には元の状態に戻らない。「内耳は体内で最も再生しづらい部位の1つです」とマクリーンは述べる。「難聴が永久的なのはそのためです」。

マサチューセッツ工科大学(MIT)で健康科学技術分野の博士号を取得しているマクリーンは、過去10年間にわたり、その状況を変えようと試みてきた。マクリーンの初期の研究は、幹細胞に似ているが幹細胞より限定された機能を持つ特殊な前駆細胞が内耳に含まれることと、そのような前駆細胞の一部が有毛細胞になる可能性があることを示した。だが、前駆細胞は単独で分裂したり分化して損傷した組織を修復することはできない。この問題を解決するのに、マクリーンら研究チームは、腸などにある再生組織から得られた見識を用いた。マクリーンたちは、臓器で組織の再生を引き起こすことができる混合薬に、損傷を受けたマウスの蝸牛をさらした。驚くべきことに、彼らが用いた手法は、前駆細胞の増殖を引き起こしただけでなく、聴力回復のための鍵となる新しい有毛細胞の生成も促した。

この発見に基づいて、マクリーンは研究仲間とともに、フリークエンシー・セラピューティクス(Frequency Therapeutics)を創業した。フリークエンシー・セラピューティクスは、マクリーンが全く新しい形の医療と呼ぶものの商品化に取り組む、スタートアップ企業だ。「前駆細胞の活性化」として知られるフリークエンシー・セラピューティクスの手法には、基本的に体の自然治癒力を引き出すような化合物の組み合わせが用いられている。これまでにフリークエンシー・セラピューティクスは19件の特許を申請しており、難聴と闘うための注入可能な点耳薬を開発している。この治療薬は、人間を対象とした安全性臨床試験を無事通過した。

(ジョナサン・W・ローゼン)

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