Sara Spangelo サラ・スパンジェロ (34)
フレンチトースト1枚サイズの人工衛星を多数打ち上げることにより、世界で最も低コストで常時利用可能な衛星通信ネットワークを構築した。
サラ・スパンジェロは、宇宙飛行士になることはできなかった。しかし、カナダの宇宙機関への挑戦が失敗に終わった4年後、スパンジェロは独自の形で宇宙へのマイルストーンを達成した。世界で最も低コストで常時利用可能な衛星通信ネットワークの公開である。
ミシガン大学で航空宇宙工学の博士号を取得したスパンジェロは、現在スウォーム・テクノロジーズ(Swarm Technologies)のCEO(最高経営責任者)である。同社は、地球上のどの場所にあるデバイスに対しても、安価なデータサービスを提供することを目指している。現在、海、砂漠、極地など、地球上の90%近くがインターネットにアクセスできない環境にある。長い間、衛星を使った接続は法外な費用のかかるものだった。衛星ネットワークの導入や維持には一般的に数十億ドル必要だからだ。
コスト削減の鍵となったのは、サイズを小さくすることだ。フレンチトースト1枚ほどの大きさのスウォームの衛星は、現在軌道上にある双方向通信機器の中で最も小さい。非常にコンパクトなので、民間のロケットに格安で搭載できる。スウォームが2021年末までに地球低軌道に配置完了予定の150基の衛星群の打ち上げ費用は、合計で300万ドル未満となる予定だ。
VHF帯の電波を使うスウォームのデータ接続では、船員たちがネットフリックスの動画をストリーミングすることはできない。現在の転送速度は1キロビット毎秒で、1990年代のダイヤルアップ接続程度の速度だ。スウォームが得意とするのは、世界で最も辺ぴな場所から、小さくても有用性の高い情報パケットを伝送することだ。これにより、給水設備の遠隔監視、パイプラインの漏れの検知、土壌の含有量測定、野生生物の追跡、コールドチェーン輸送中のワクチンの温度保証などが可能となる。
(Jonathan W. Rosen)
- 人気の記事ランキング
- Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
- How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
- Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
- This US startup makes a crucial chip material and is taking on a Japanese giant 知られざる半導体材料の巨人 「味の素」の牙城を狙う 米スタートアップの勝算