ジエ・シュー博士は、印刷可能で伸縮性がある電子回路を、大量生産できるようにした。シュー博士の数々のブレイクスルーは、未来のウェアラブル・テクノロジー、先端ロボット工学、あるいは皮膚に貼り付けたセンサーを利用するヒューマン・コンピューター・インターフェース(HCI)に応用できる可能性がある。
シュー博士の功績は、折り曲げたり、引っ張ったり、繰り返し動かしても、稼働し続けるポリマー回路を開発したことだ。研究者たちを悩ませてきたこの課題は、2016年に同博士が、ゴムの表面に2層のポリマーコーティングを施し、2倍の幅に伸ばしても導電性を保つ素材を開発したことで解決した。
2019年、シュー博士はこのテクノロジーを改良し、伸縮性のある半導体をロール・トゥ・ロール方式で大量生産できるようにした。ロール・トゥ・ロールとは、製造業において一般的なプロセスで、テキスタイルやプラスチックなどさまざまな製品を大型ローラーを使って印刷するものだ。伸縮性のある半導体をこの方式で大規模生産可能にしたのは、シュー博士が初めてだ。
短期的には、シュー博士が発明した素材と製造技術により、フレキシブル・ディスプレイや皮膚に貼る医療用センサーは、今よりもはるかに実用的で製造も容易になるだろう。すでにサムスン・エレクトロニクス(Samsung Electronics)は、シュー博士との共同研究で定義した2つの生産方式の特許を取得している。シュー博士の素材はさらに、皮膚に似た機能的外表面を備えた義肢のデザインの改良にもつながる可能性がある。
世界にこれ以上プラスチックが溢れないように、シュー博士は現在、ポリマー半導体素材をリサイクル可能な製品、あるいは生分解性のある製品に置き換える方法を検討している。「このような持続可能性に関する考えは、すべての商用素材について、開発の段階から前提として組み込まれるべきだと思います」とシュー博士は語る。
(Russ Juskalian)
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