KADOKAWA Technology Review
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博愛家
Lan Truong
35歳未満のイノベーター35人 2021博愛家
イノベーションへの創造的なアプローチは、世界をより公平な場所にしている。

Shriya Srinivasan シリヤ・スリニヴァサン (27)

所属: マサチューセッツ工科大学(MIT)

義肢を今よりもずっと本物の手足に近いものとして利用できるようにすることを目指して、義肢利用者に触覚をもたらす手術法を考案した。

現在、マサチューセッツ工科大学(MIT)で生物医学工学分野の博士研究員として研究するシリヤ・スリニヴァサン博士は、子どもの頃、義肢で生活することの困難を目の当たりにした。友人が先天性の四肢欠損を抱え、義肢を使っていたのだ。切断手術を受けてその部分の神経を失った患者と同じように、その友達の脳には、ほとんどの人が利用しているような、触覚で物体を感じ取り、平衡感覚を保ち、空間内の体の位置を知覚するために重要な神経シグナルが届いていなかった。スリニヴァサン博士が発明した2つの手術法は、近い将来、義肢利用者が触覚を取り戻すのに役立つ可能性がある。

ひとつめの手術法は、彼女がMITの大学院生だった時に開発したもので、四肢の残存部分に小さな筋肉片を移植するという方法だ。この施術の目的は、四肢の位置と運動の感覚を高めることにある。治験でこの施術を受けた患者は、従来の四肢切断患者よりも、義肢をはるかに器用に、少ない痛みで操作できるようになった。

もうひとつの手術法は、初期段階ながら、触覚の再構築に期待が持てる成果を生み出している。こちらは、筋肉片と電極で包まれた手足の指先の皮膚を、四肢の残存箇所に移植するというものだ。その後、センサーと無線送信機を搭載した義肢を装着する。義肢が物体に触れると、その感覚が移植された皮膚の天然のセンサーに伝わり、そこから脳へと伝達される仕組みだ。どちらの手術法も、四肢切断手術の一環としてだけでなく、すでに切断手術を受けた患者にも適用できる。

スリニヴァサン博士の最終目標は、義肢を今よりもずっと本物の手足に近いものとして利用できるようにすることだ。四肢切断術へのアプローチが、命を救うためのやむを得ない処置から、運動能力の回復のための処置へと一変するきっかけになることが期待される。

(Jonathan W. Rosen)

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