
Jonathan Gootenberg ジョナサン・グーテンバーグ (30)
Cas12とCas13を利用して、クリスパー(CRISPR)の欠点を克服する遺伝子編集ツールを作成。商用化するためのスタートアップを共同創業した。
現在のクリスパー(CRISPR)遺伝子編集ツールは、Cas9と呼ばれるタンパク質を使い、ゲノムの中の標的箇所を切り取る。その働きはすばらしいが、欠点もある。ゲノムの別の場所に意図せざる編集をしてしまうことがあるし、一時的な調整をしたいと思ってもできない。
ジョナサン・グーテンバーグ博士は、CRISPRのこうした欠点を克服し、CRISPRの可能性をさらに広げる、別の遺伝子編集ツールを作成している。グーテンバーグ博士が使っているのは、Cas9よりもコンパクトなタンパク質であるCas12で、多くの遺伝子を同時に編集できる。これを使って、がん患者の免疫細胞に遺伝子編集を加えれば、がんとの闘いを優位に進められるかもしれない。
もうひとつのツールはCas13だ。グーテンバーグ博士と共同研究者のオマー・アブディエ博士(2020年の35歳未満のイノベーター)は、このタンパク質がDNAではなく、RNAを標的にすることを示した。興味深い発見だ。多くのウイルスはRNAを遺伝物質とし、細菌はDNAとRNAの両方を備えている。そのため、Cas13を使えばヒト細胞の中にある病原体由来の遺伝物質を発見できるだろうとグーテンバーグ博士らは考えている。さらに、遺伝子編集のためのツールを、試験紙を用いる診断検査キットに転用するという発想も生まれた。2019年にグーテンバーグ博士とアブディエ博士は、この技術を商用化するため、シャーロック・バイオサイエンシズ(Sherlock Biosciences)を共同で創業した。
(Emily Mullin)
- 人気の記事ランキング
-
- Why Chinese manufacturers are going viral on TikTok 「ほぼエルメス」を工場直送 中国の下請け企業が ティックトックで反旗
- A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
- Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
- AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声