あるとき耳が悪い人がバーに入ってきた。アメリカン・ジョークの始まりのようだが、手話が使えるバーテンダーがほぼいない以上、バーで話が弾んだ、なんてことにはならない。こんな場面で活躍するのが「ハンド・トーク」(話された言葉をアバターがスマホ画面で手話に変換するアプリ)だ。
今のところ、ハンド・トークが変換できるのはポルトガル語の手話「リブラス(Libras、プログラムを作ったロナウド・テノリオの母国ブラジルで使われている手話)」だけだ。しかし、ブラジルだけでも少なくとも1000万人の難聴者がおり、100万人がモバイルアプリ「ハンド・トーク」をダウンロードしている。
ユーザーは、画面に「お話を手話に翻訳します」と表示されたスマートフォンを話し相手に向けるだけだ。会話が始まるとアニメーション型アバターのヒューゴが手話に翻訳してくれる。
- 600万
- 毎月ハンド・トークで翻訳されている翻訳数
手話通訳では、単純に会話を手の動作に置き換えるだけではなく、ヒューゴの表情も内容に応じて変化させる必要があり、話し言葉をジェスチャーのアニメーションに変換するのは、手間のかかるプログラミングになる。表情は、手の動きと合わせて、手話の意味を補完するのだ。テノリオの開発チームは、毎月数千の例文をプログラムに送り、手話の3Dアニメーションと組み合わせている。開発チームは常にアプリケーションを更新して、手話通訳の精度を高め、表情を改善させている。
テノリオは、今後さまざまなバージョンのアバターを展開する予定で、ユーザーがバーチャル手話通訳ヒューゴの性別や人種を変更することで、表現力を高め、わかりやすくしようとしている。
(ジュリア・スクラー)
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クレジット | Photo courtesy of Ronaldo Tenório |
著者 | MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] |